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第1話‐② 陽だまりの彼

مؤلف: 青芭伊鶴
last update تاريخ النشر: 2026-06-22 17:54:35

 ──半年前。

「今日もカラオケ行かねぇ?」

「ええ? またぁ?」

 キャッキャッと騒いでいる若者をかき分けるように、私はとある人を探していた。

 ネットで知り合った人の──伊都だ。彼とは同じ界隈の、オタ活アカウントで知り合った。話していくうちに打ち解けていって、どこかで会いませんかという話まで飛躍したのだ。

 そんなこんなで、伊都が『一緒に夏祭りで花火が見たい』と言ってくれた。嬉しかったので、即了解を出した。

 別に付き合っていない。付き合う予定もない。なのに、周りからは『お似合い』の言葉が飛び交ってしまった。特に親とか友達とか。

 とても迷惑だと言ったけど、私はなぜか悪い気はしなかった。その意味は分かっていなかった。だって今は、伊都に夢中だから。

「あの、伊都さん、ですよね?」

「は、はいっ」

 聞き慣れた低い声。敬語が取れない感じ。伊都本人だと直感した。

「えっと、理桜さん、ですよね。俺の我儘を聞いてくれて、ありがとうございます」

「もう、堅苦しいなぁ。大丈夫だよ、タメ口で」

「悪いです。俺はこのままでいいので……」

「うん、そっか。君がそれでいいなら、いいよ。行こっか」

 私は伊都の手を引くような形で、夏祭りへ飛び入り参加をした。

 こうやって誰かと遊びに行くなんて、私の人生の中では全くなかったから、嬉しかった。その分、自分なんかで楽しいのかなって考えちゃうこともあった。

 ちらりと後ろを見ると、伊都は申し訳なさそうに手を引っ張られながら、顔を赤くしていた。

(なんだ、可愛いとこもあるじゃん?)

 ふふっと笑みがこぼれてしまった私は、調子に乗って、いろんな出店《でみせ》をまわった。

 これはどう?とか、美味しい?とか聞いてみた。そしたら、緊張が解れてきたのか、少しずつ笑顔が増えていった伊都。

 じゃがバターを買った私たちは、近くにあったベンチに並んで座る。箸で簡単にほぐれてしまうジャガイモと熱さで少し溶けているバターに、見るだけでおいしさが伝わってきた。

 ジャガイモに箸を通すと、ほろほろと零れていく。そのタイミングで口に運ぶと、優しいバターの味とジャガイモの柔らかさに、頬が簡単に緩んでしまった。

 視線を感じて伊都のほうを見ると、すぐに顔を逸らした。耳まで赤い。

「やっぱり理桜さんは、凄いです。人を楽しませる天才です」

「な、なにを言っ……別に私は、勝手に楽しんでいただけで……」

「いや、凄い人です。俺は全然何も返せていないのに、理桜さんはすごく楽しそうにしてたから……」

 それは私が勝手に楽しんでいただけで……。

 でも、それが伊都にとって『楽しいこと』であれば、私は嬉しい。

「私は勝手に楽しんでいただけだよ。私、ずっと一人だったから、こういうのは慣れてるの」

「慣れちゃ、ダメです」

「へ?」

「今度から俺が、傍《そば》にいます」

 突然、手を握られて驚いた。しかも、恋人つなぎ。手汗がヤバい。

 告白じみた言葉に、私の目は泳ぎっぱなし。

「そ、それは……どういう意味?」

「俺と、付き合ってくれませんか……っていう、意味、です」

「えっ、ええっ、私で、いいんですか?」

「はい」

 伊都の言葉に、顔が熱くなる。人の目があるというのに、そういうのをやってくるとは思わず、目をそらしてしまう。

 でも、目線を他へ移すのを許さず、私の頬に手を添えてくる。顔が熱い。

「よ、喜んで……私で良ければ、よろしくお願いします」

「へへ、よかった」

 ようやく敬語が外れたかと思ったら、急にデレデレし始めてきた。

 伊都さん、あなたっていう人は、好きな人が出来るとデレるタイプだったの? そう思うと愛おしさが増してきた。

「俺、頑張るよ。理桜に嫌われないように、かっこいい男になるから」

「きゅ、急なタメ口は心臓に悪いッ」

「ごめんって。俺も緊張してたんだよ」

「知ってましたが⁉」

 急にニコニコしている伊都に、私の情緒がついていかない。やはり顔が熱い。

 目をそらしてみたけど、キラキラ輝いて見える彼は、まるで『陽だまりにいるかのような存在』に見えて仕方がなかった。

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  • 不器用な言葉たちへ   第2話-③ 慣れない感情

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